青色の空に神様がきた

Twitterの140字では書ききれないあれこれを。ブログに述べられている考察は、あくまで筆者のブログ執筆当時の考えであり、当然ながら日々勉強したり議論したりする中で考えが変わることもあります。また、このブログはいち大学院生の個人ブログであり、いかなる機関の公的見解を示すものでもありません。

映画『永い言い訳』の感想と考察(※ネタバレ注意)

※ほとんど自分用メモなので文章が雑です。

・冒頭のシーンで、いきなり「奥さんが旦那さんの髪を、家で切っている」ということに対する違和感→あとで伏線回収。見事。

・登場人物たちの「髪が伸びる」ことが、「時間の経過」と「切ってくれる人の不在」のふたつの意味を持っている。深い。

・登場人物たちの職業の選択が見事。本木雅弘は小説家、竹原ピストルはトラック運転手、深津絵里は美容師で、そのすべてに意味がある。

・冒頭での妻に対する本木雅弘の「語り」と、山形の警察署に行ったときの衣笠幸夫(本木雅弘)の態度で、衣笠幸夫がどういう人間で、この夫婦はどういう関係かがすぐわかる。

・竹原ピストルが演じるトラック運転手のトーチャンが最高。勉強はできないけど心は真っ直ぐなトーチャンと、そんな父のようにだけはなりたくないと揺れる息子の心。科学館のシーンでの、父「ニンニク臭い息に気をつけなきゃいけないときだってあるだろ!」息子「二酸化炭素を減らすために木をたくさん植えるほうが大事なんだよ!」はとてもいい対比だった。

・全体的な是枝裕和感。特に子どもの撮り方。調べたら西川美和是枝裕和の弟子なんですね。

西川美和の描く「なにかが欠損している家族」は、是枝裕和の『誰も知らない』の家族を思わせます。「髪が伸びる」に二重の意味を持たせるのは、そういえば『誰も知らない』にもあった表現なのよね。

・あかりちゃん(竹原ピストルの娘役)が大声で「もろびとこぞりて」を歌うシーンと、竹原ピストルが事故るシーンのBGMが「もみの木」だったので、西川美和はクリスチャンか?と思ったけど真相不明。でも少なくとも中高はキリスト教の学校だったもよう。

・映画の中の四季がよい。

・「先生、奥さんが亡くなってからちゃんと泣きましたか?」というセリフの破壊力。

・とにかく映像と音楽が美しい。静かなシーンは静かに、妖艶なシーンは妖艶に、騒がしいシーンは騒がしく。

・自分の人生と向き合えていない、自己愛のカタマリ、幼稚な感情表現しかできない男が、世界と和解していく物語。サイコー!こういう映画が観たかった。

ジェンダー観。いい意味で「女性監督だから描けた」作品だと思う。

・衣笠幸夫は、真平くん(竹原ピストルの息子)に自分を重ね合わせるんですね。

・いつでもどこでも泣く父(竹原ピストル)、泣いたことを父に秘密にしてほしい息子、妻を亡くしても泣けない男(本木雅弘)。「ちゃんと泣ける人は強い」というメッセージ。

・「永い言い訳」=人生、なんですね。本木雅弘の人生は、妻を亡くし、その死に向き合えるようになるまで、ずっと「言い訳」をして生きてきた。調べたら英語版タイトルは「Long Excuse」だそうで、まさにエクスキューズ。「自分が自分の人生と真剣に向き合わなくていいエクスキューズ」をたくさんしながら生きている人、あなたのまわりにもいませんか?

・大宮(竹原ピストル)と真平くん(息子)のケンカのシーン。「お前はたくさん勉強して、そんな口をきく人間になるのか!(正確には覚えてないけど、だいたいこんな感じ)」というのも、この親子をよくあらわしていた。学歴社会批判もあるかも。

・小説家津村啓(衣笠幸夫=本木雅弘)がグーグルで自分の評判を調べてるのと、映画『何者』が描こうとした「ネット上における自意識過剰」は、本質的には同じものでないでしょうか。

・「妻が死ぬとかつての同級生から宗教勧誘の電話がかかってくる」というのがとてもリアルだなと思いました。

・物語はハッピーエンドです。

糸井重里さんと燃え殻さんがこの映画を絶賛していた。いいんだけど、『永い言い訳』を絶賛してる層を見るに、こんなものに共感してるから、「S沢さんは昭和生まれみたい」とか言われるんじゃなかろうか……。

・同じく、「固定電話の留守録機能(!)」の描写を共感しながら観れる若者ってどれくらいいるんでしょうか。

・ネット上での反応をみるに、余韻を長く引きずるタイプの映画であるようです。わたしも半日経ったけどまだ引きずってるし、何日も引きずってる人もいる。いい映画の条件ですね。

 

 ここ3ヶ月で『シン・ゴジラ』『君の名は。』『SCOOP!』『何者』を観たけれど、ここ最近で観た作品でこの作品がいちばん良かったです。