青色の空に神様がきた

Twitterの140字では書ききれないあれこれを。ブログに述べられている考察は、あくまで筆者のブログ執筆当時の考えであり、当然ながら日々勉強したり議論したりする中で考えが変わることもあります。また、このブログはいち大学院生の個人ブログであり、いかなる機関の公的見解を示すものでもありません。

#セカオワ来韓公演ボイコット に思うこと

もっと気負わずにブログを書けるようになりたい(願望)。

(特定のいくつかの記事を除いては)大して読まれてもいないのに、毎回ブログを更新するのにすんごいエネルギーを使っているのである。

というわけで、今日はゆるーくいきます。その割には重いテーマですが・・・。

 

私の好きなバンド、SEKAI NO OWARIは現在ライブツアーをやっている。そのライブのツアーセットが、次のような記事になっていた。

news.livedoor.com

この記事を見たときの(厳密に言うなら、#セカオワ来韓公演ボイコット というムーブメントを知ったときの)私の感想は、

それ、私も思った。

 

私は2014年頃、友人がカラオケで「RPG」という曲を歌ってるのを聴いてSEKAI NO OWARIにハマり、それ以来セカオワがライブをすれば必ず1公演以上は参加し、いわゆる「ライブ遠征」(好きなアーティストのライブのために遠くへ出かけること)で仙台へ出かけたこともあるくらいのセカオワファンだ。

今回のツアー「INSOMNIA TRAIN」は全国各地の野外イベント会場でライブが行われ、関東圏では山梨の富士急ハイランドが会場になっていたので、5/25に日帰りで富士急ハイランドまでライブを観に行った。

 

前提をひとつフォローしておくと、富士急ハイランドのコニファーフォレスト(今回のライブの会場となった場所)はSEKAI NO OWARIの「聖地」的な場所だ。

SEKAI NO OWARIがメジャービューして最初に行った大型ライブ「炎と森のカーニバル」(2013年)の会場が、この富士急ハイランドコニファーフォレストだった。セカオワはその次の年、2014年にも「TOKYO FANTASY」というライブを同じ会場で行った。ボーカルのFukaseは元々遊園地が好きで、バンドマンになる前は横浜のコスモワールドでアルバイトをしていたそうだ。つまり「遊園地」はセカオワにとって特別な場所なのである。

今回のライブのMCでもボーカルFukaseが「僕たちは東京出身なので、"地元に帰る"という感覚がなくて、帰るふるさとがある他のバンドを羨ましく思ったりもしたけど、この富士急ハイランドコニファーフォレストが僕たちのホームだ」というようなことを言っていた。

さらに、2014年のライブ「TOKYO FANTASY」で、私はチケットを取ったにも関わらず、(野外の会場なので)台風でチケットが払い戻しになってしまった。

つまり、私にとっては4年越しの念願のSEKAI NO OWARIの聖地富士急ハイランドでのライブだった。「4年越しの念願の聖地でのライブ」なので、もちろんいい思い出なのだけれど、それでも冒頭の女性蔑視のツアーセットの他にもいくつかモヤモヤした気持ちの残るライブだった。そのモヤモヤについて今日は書きたいと思う。

 

モヤモヤの理由のひとつめは、デタラメの外国語が多用されていることだ。

まずツアータイトルの「INSOMNIA TRAIN」が意味不明だ。INSOMNIAは「不眠症」、TRAINは「列車」なので、直訳すれば「不眠症列車」というところだろうが、英語としても日本語としてもイマイチ意味が通らない。

このことについてはメンバー自ら解説をしていて、今回のツアーのモチーフは「移動式歓楽街」なんだそうだ。(バーとか見せ物小屋とか性風俗のある)「夜の街」が電車の形をしていて街ごと全国各地を移動する、というイメージなのだろう。INSOMNIA TRAINをかなり好意的に翻訳すれば、「眠らない街を載せた列車」ということになるかもしれないが、前情報なしに「INSOMNIA TRAIN」という文字列だけを見せられた時に、この訳にたどり着くのはほぼ不可能だと思う。

「日本のバンドが考えるツアータイトルなんてそんなもんじゃね?」という反論がありそうだが、今までのセカオワのライブツアーのタイトルを列挙すると、

炎と森のカーニバル炎と森のカーニバル〜スターランド編〜,TOKYO FANTASY,Twilight City,The Dinner,TARKUS(造語),INSOMNIA TRAIN

で、それ単体でもなんとなくは意味が通る他のツアータイトルと比べて、史上最も「なんのこっちゃ」なツアータイトルだと思う。

 

SEKAI NO OWARIは海外にもそれなりにファンがいて、英語の曲もリリースしている(海外限定シングルもある)。英語の曲をリリースする理由について、以前ボーカルFukaseはインタビューで「海外の応援してくれる人たちに、ちゃんと伝わる言葉で歌いたいから」と述べていた。それだけ海外ファンを意識しているセカオワならば、今回のツアーINSOMNIA TRAINに海外公演はないとはいえ、きちんと海外ファンにも見られることを意識したタイトルにしてほしかった(実際、富士急ハイランドの会場には中国語を話している人もいた)。

デタラメの外国語はツアーセットにも使われていて、

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「鮮骨」「藍色火吧」なにそれ中国語?

 

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いやいや、スペイン語も中国語も意味が通ってないから。言いたいことはわかるけど。

・・・という具合なのである。

 

もやもやの理由のふたつめは、同じくツアーセットについてで、ツアーセットのネオンライトに簡体字の中国語が用いられていることだ。

知らない人のためにいちおう解説しておくと、中国語には「簡体字」と「繁体字」というふたつの書き言葉がある。「繁体字」が中国で伝統的に用いられてきた表記方法で、台湾や香港では繁体字が用いられている。一方簡体字は、中国共産党が新中国を作ったときに普及させた表記方法で、中国大陸では簡体字が用いられている。つまり、簡体字共産党中国なのである。

例えば私の苗字に入っている「塩」を例に出すと、

日本の漢字→塩 繁体字→鹽 簡体字→盐

というふうに、日本の漢字、簡体字繁体字でそれぞれ表記が異なる。

先ほどの写真をもう一度見てほしい。わかる人にはわかるが、今回のツアーセットで用いられているのはすべて簡体字なのである。

 

中華人民共和国と台湾(中華民国)は、それぞれが「自分たちこそが、本当の“中国”だ」と主張していて、この争いはまだ決着していない(台湾のほうを「中国」として承認している国もある)。

簡体字を使うことの何がマズイかというと、簡体字を使うこと=中華人民共和国こそが本当の“中国”だという立場を支持する、という意思表明になりかねないのである。

台湾のファンの数もバカにならないのに?そんな危険な主張をするの???

人はそれぞれ正義があって 争い合うのは仕方ないかもしれない

だけど僕の正義がきっと 誰かを傷つけていたんだね

ーーDragon Nightより

なんていう歌詞を歌っているのに、共産党中国の「正義」を主張することによって、台湾の人の「正義」が踏みにじられてることに無頓着なの????

と私は思ったのである。

正直、ツアーセットの簡体字を根拠に #セカオワ台湾公演ボイコット というムーブメントが起きてもおかしくない、と私は思っている。まだ起きてないけど。

 

もやもやの理由のみっつめは、大道芸・見せ物小屋を思わせるステージ演出である。

今回のツアーは「歓楽街」がテーマであるせいか、ステージ上のダンサーの演出で、例えば「火のついた棒のジャグリング」など、大道芸・見せ物小屋(サーカス)を思わせる演出が多用されていた。

しかし、文化人類学が専門でない私でも、大道芸・見せ物小屋やサーカスが、貧困や差別、そして人権侵害の歴史と隣り合わせであることを知っている。だから私はサーカス的な演出をいまいち楽しめないのである(けれど私の感覚は一般的ではないのだろう)。

これには私個人の経験も関係している。私は高校生の頃、中国の地方都市でたまたま見せ物小屋に入り、「タバコを食べる大道芸」をみてショックを受けトラウマになったことがある(本当に食べていたのである)。このように人体に激しく損傷を与えるパフォーマンスをしてまで生きなければならない社会とは何か、高校生ながらに真剣に考えた。「火のついた棒のジャグリング」なんて「タバコを食べる」に比べたらかわいいものだけれど、素直に「すごーい」とは思えないのである。

 

そして、もやもやの最後の理由が、冒頭の女性蔑視のツアーセットである。

#セカオワ来韓公演ボイコット は  そして  というタグと共に用いられいた。

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“女性の身体”は装飾品じゃない。

 

そして、私が最も嫌な気持ちになったのがこちら。

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カクテルグラスに入った女性が「Drink Me」はマズイでしょ。女性は“モノ”じゃない。

 

かなり好意的に解釈すれば、歓楽街(夜の街)の歴史は、女性蔑視の歴史とまた隣り合わせだ。だから、史実に忠実に夜の街を再現しようとするとこうなるのかもしれない。しかし、今回のツアーセットは「多国籍」を意識した作りになっていて、中国語とスペイン語が隣同士に並んでいる時点で、どこかの歓楽街の再現ではなく、「架空の歓楽街」ということになる。だったら女性蔑視の部分だけ忠実に再現しなくてもよくない???

 

バンドの内情に触れるならば、今までのツアーでは、ステージ総監督をピアノのSaoriがつとめていた。しかし、Saoriは去年の年末に出産し、産休をとっていたため、今回のツアーの総監督は(はじめて)ボーカルFukaseがつとめた。今までのセカオワと違ったテイストになっているのは、そのせいかもしれない。しかし、そんな事情を知っているのはコアなファンだけであって、言い訳にはならない。ボーカルのFukaseセカオワスタッフが今回の批判から学んで、また次は彼ららしい世界観でライブをしてくれることを、私はいちファンとして願う。

 

SEKAI NO OWARIのライブでは写真撮影が許可されており、ここに掲載した写真は全て私が撮影したものです。